DAY14 ディンボチェ(4349m)→ トゥクラ(4830m) → ロブチェハイキャンプ(5200m)
朝のダイニングは混んでいた。
オーツポリッジをいただく。
7:30くらいに到着した人がクライミングガイドのニマカンチャシェルパ。
彼はパンボチェに住んでいて1時間くらいで来れるらしい。
(私の足だと3時間かかる)
そういえば、何日か前にこのロッジで話した方だ!
その時は、アイランドピークからの帰りだったそうで、
「日本人?」と聞かれ、「そう」と答えると、
「日本に行ったことがある」と言っていた。
ニコニコしていて、私のイメージのクライミングガイドには見えなかった。
なんだ、あの時の方なら、あの時そう言ってくれればよかったのに!なんて思った。
ネパール人がなのか、シェルパがなのか、なぜか自分から名乗ってこないんだよな〜。
シャイなのかな。
エージェントのへマンタも来て、念の為のダウンミトンも貸してくれた。
荷物を詰めていたら、クサンがスニッカーズや、MARS、ココナッツチョコレートをくれた。
それからポーターの男の子もやってきて、荷物の準備ができたら先に行ってるね、先に出発して行った。
私たちは意外とゆっくりな出発で8:30に出発した。
荷物が軽いというのは本当に全然違う。
ポーターが運んでくれるのはありがたいなぁ。
このディンボチェを越える丘が何気にきつい。
ニマは歩くのが早い。
丘を越えて少ししたところで、なんと、あのカミリタシェルパに遭遇!!
ニマカンチャが私たちの前を歩いている人のことを「この人、カミリタだよ」と教えてくれて、
あれ?カミリタってエベレストに何回も登っている人じゃなかったっけ?と思い、
「あの有名なカミリタさんですか?」と聞いてしまった。笑 (後から思えば変な質問)
「そう」って。
エベレストに26回も登っている世界記録保持者だ!!(2022年11月時点、2024年4月末時点で28回に記録を更新していた)
わーお、なんと偶然!!
こんなに普通にいるものなのか!
今日はトレッキングのお客さん女性1人を連れていた。
ニマカンチャはカミリタと知り合いのようで、しばらく彼らの後について一緒に歩いた。
カミリタのペースが少しゆっくりだったので助かった。
カミリタは数珠を手に持ってずっと玉を数えていたのが印象的。
当時の私は、有名なシェルパの名前はほとんど知らなかったが、何かの記事でエベレストに一番多く登っている人ということで紹介されているのを読んだことがあったような気がした。
エベレストに26回も登るって色々な意味ですごいことだ。
そんな人に会ってしまったなんて、なんて幸先がいいのだろうと、嬉しかった。
2人はどこへ行くの?なんて会話をしていたようだ。
カミリタが「君は良いガイドに会えてラッキーだね」と言ってくれたのが心強く嬉しかった。
しばらく一緒に歩いて、みんなが休憩している場所で私たちも休憩。
あぁ、一緒に写真撮って欲しかったけど、カミリタはみんなに囲まれてしまい、切り出すタイミングが掴めなかった。
ニマカンチャが「そろそろ行こうか?」と言ったので、思い切って
「カミリタと一緒に写真を撮りたいんだけど」
と伝えてみると、「OK!OK!」と言って少し待ってくれ、カミリタにその旨を伝えてくれて一緒に写真を撮ることができた。
とても気さくな人だった。
ミーハーな私登場。
私の顔は浮腫んでいてパンパンで恥ずかしいが、それも含めて良い思い出になった。
カミリタたちはベースキャンプまでのトレッキングだそうで、今日はロブチェの村まで行くそうだ。
ディンボチェから2時間で、トゥクラに到着。
ここでお茶休憩。
ニマカンチャはこのロッジの人とも知り合いみたい。知り合いだらけだなぁ。
私が屋久島でお客さんに「知り合いだらけですね」と言われるのと同じか。笑
「ここでランチ食べても良いよ」と言われたけど、まだ10:30でお腹が空いていなかったのでお茶だけ飲んだ。
今日は風が強くて、砂が舞っているので、景色が少し霞んでいるそう。
このトゥクラから、ロブチェの村とロブチェハイキャンプとに道が別れる。
多くの人はロブチェの村へ行くので、ここから静かになった。
チョラツェやチョラ湖を横目に進んでいく。
ロブチェからゾンラに行く時の風景に似ているなぁと思っていたら近くみたい。
やがてチョラパスも見えた。
人とすれ違わない道。
途中で会った青年は、ハイキャンプで働いているそうで、この時はテーブルセットなどを下の村に降ろしていた。
そして、またこの先で空身で戻ってきた彼に会うこととなった。
早い!!
ニマカンチャは数年前までタンボチェゴンパでお坊さんをしていたらしい。
そのため、日本へ行ったのは修行としてお寺へ行ったとのことだった。
なるほど。
「もしかして2017年(前回エベレスト街道歩いた時)はタンボチェゴンパにいた?」
と聞くと、いたそうだ!!
わぉ、あの時あそこにいたんだ、と感慨深い。
そして、ふと気がつくと小さな声でずっとお経を唱えていたのも合点が行った。
その後、彼は結婚したので、お坊さんを辞め、クライミングガイドになったとのこと。
ポルツェという村の出身で、お兄さんもクライミングガイドだそう。
ニマカンチャはクライミングカイドになってまだ3年ほどだそうだが、エベレストには2回登ったそう。
高所に強いシェルパの中でも、特に向いているんだろう。
実際に、これでもゆっくり歩いてくれているのだろうが、歩くのがとても早い。
元お坊さんということで精神力も強そうだ。
ベースキャンプが見えてきた。
テントは1張もなく、トイレ小屋だけあった。
360°どこを見ても景色がすばらしいので、何度も振り返ってしまう。
ベースキャンプからハイキャンプまで、最後はぐっと登るのでなかなか大変だった。
14:30、お腹がぺこぺこになった頃にようやく到着。
到着すると、今日のハイキャンプはなんと我々しかいない!
昨日は10名くらいいたそうだ。
さっきの青年もいた。
キッチン&ダイニングテントとその周りに就寝用の常設テント。
トイレはテントの中のバケツするシステム。
テントのジッパーが閉まらず、見えてしまうのでは?という感じだったが、気にしていられない。
お茶は飲み放題でどんどんどうぞ、というのがありがたい。
軽食にマカロニとシナモントーストを出してくれて、これが超絶美味しかった。
ニマカンチャもめちゃくちゃお腹空いていたみたいで、すごい勢いで食べていた。
スタッフはコック一人と、ポーター2人。
コックはポーターの青年のお兄さんらしい。
その後、簡単にロープワークの練習。
ハーネスつけて、アッセンダーで登る練習と、エイトカンで降りる練習。
登る、降りるは問題ないけど、器具をつけるのが難しい。
覚えられるか心配で何度か練習した。
でも新しいことやるのは楽しい!
なんだかずっと食べてばかりだが、夕食前にまた軽食を出してくれた。
ポップコーンとガーリックスープ。
お腹は空いていないが、ガーリックスープは高山病対策のためにいただいた。
それから少し休んで、夕食。
「ダルバートでいい?」
と聞かれ、
「もちろん!」と思った。
出してくれたダルバートは米、卵焼き、ダルスープだった。
いつかどこかのロッジで見た、ガイド&ポーター用のダルバートみたい。
さっき軽食食べたばかりだからあまりお腹空いていないところに多めのダルバートだったのでおなかいっぱいで苦しいくらいになってしまった。
明日は0:30に朝食、1時出発とのこと!
明日というか、もはや今晩だ。
18時に寝袋に入ったけど寝れるかな。
最初下半身が寒くて、ホッカイロを両腿に貼った。
あれだけお茶飲んだのでトイレにも行きたくなり、気合い入れて起き上がる。
そして、再び寝袋に入るもなかなか寝付けなかった。
というのも、下記の考えを巡らせていたら自分の中で盛り上がってしまったのと、やっぱり酸素が薄いので(ハイキャンプは標高5200mくらい)、なかなか寝られない。
それでも眠れなくても横になっているだけで大丈夫な気がすると思い込ませ、寝れないことは気にしないようにしようと思った。
ハイキャンプまで着く間にふと降りてきたインスピレーション。
今回のヒマラヤ旅のテーマは「巡礼。祈り。」
文字で書くとどうも表面的な感じになってしまうのだが・・・。
今回の旅は、他のトレッカーとの交流を楽しむとか、すごいミラクルが起きることはなく、淡々ととこなしているな、とチュクンで思ったけど、テーマが巡礼、祈りならそういうことだなと納得した。
今まで何度もヒマラヤを歩いてきて、マニ車もタルチョもマニウォールもマニ石と、全ては祈りを物質化したものだったり、祈りや願いが広がるようにだったりで作られたものだけど、不思議と今回ほど空気に祈りが溢れていると感じたことはない。
何時間かすると体がほかほかに温まった。
良かった!
やっぱりダウンって温まるのに少し時間がかかるのかな。
屋久島に住んでから、初めてのヒマラヤ。
それまでと感じることがまた違うのが面白い。
祈りが生活の中にあること
花崗岩(石英、水晶)
人々が山を崇めていること
住んでいる人がその土地を愛していること
そんな共通点も感じた。
ニマカンチャは夕食の前もお経を唱えていて、その静かな低音がすごく心地よかった。
ずっと聞いていたいと思った。
DAY15 ロブチェハイキャンプ(5200m)→ ロブチェイーストピーク(6119m)→ ロブチェハイキャンプ (5200m)→ トゥクラ (4830m)→ ディンボチェ(4349m)
アタックの日は必死すぎて写真がほとんど撮れなかった。
記憶もない部分も多く、覚えていることを書いていきます。
なかなか寝られないまま数時間経過し、何時に寝れたのかわからなかったが、ふと起きたら0時を過ぎていて焦った。
携帯で目覚ましをセットしていたが、電源切ったらアラームって鳴らないんだっけ?
頭痛はないので安心した。
昨晩は上は着替えず、トレッキングパンツだけ履き替えて寝たので、ズボンだけ履き替えてダイニングへ。
オーツポリッジと茹で卵を1つ食べて、トイレに行って靴を履き替えて出発。
クサンに卵食べたら力が出ます、と言われていたので願掛けで食べた。
大便があまり出なかったので途中で行きたくならないかが心配。
昨日の強風は止み、思ったより全然寒くなかったので、ダウンジャケットは脱いで、
モンベルメリノウールT極厚T
Smartwoolの厚手のメリノウールシャツ
パタゴニアのフリースR2
腹巻き
レインジャケット
スキンズタイツ
モンベルメリノウール極厚スパッツ
ノースフェイスアルパインライトパンツ
5本指ソックス
という格好。
靴は最初からスポルティバを履いて、トレッキングシューズはニマカンチャが持ってくれた。
私はクサンに借りたザックにおやつと水だけ入れて、カメラも含めてその他はニマが持ってくれたので、手ぶらみたいなものだった。
満天の星空。
湖の左側を巻いてガレ場を登っていく。
おっきな岩も増えてきて屋久島みたいだ!
ヘッドライトで照らした足元の岩がキラキラ光って、地面も星空みたい。
それがとても神秘的だった。
ニマカンチャは私のスピードがわかったみたいで、ちょくちょく休憩してくれた。
あれが、ペリチェだよ、と村の明かりを指して教えてくれた。
E Hoi Maiというチャントをなんとか頭の中で唱える。
鼻水が止まらなくて、鼻呼吸がしずらい。
ネパリ式に鼻水をぴゅっぴゅっと飛ばしてなんとか鼻呼吸しようとするけど、難しくなり大体口呼吸になった。
最初の頃は、暑くなってきてフリース脱いだ方がいいかなとか考えたりしていたが、やがて時々凍っているところが出てきたりして、気温が下がってきたので、脱がなくてよかった。
2時間ほどしてクランポンポイントに到着。
ここで、クランポンをつける。
少し寒くなってきたのでダウンもきた。
ユニクロのウルトラライトダウンとパタゴニアの厚めのダウンの両方着た。
これで持ってきた防寒着は全部着たことになる。
着たら寒くなかった。
この時に、手袋を外してしまったら指先がジンジン痛んでやばい凍傷になると焦り、慌てて腕を振ったり、回したりして血をめぐらせようとした。
そして借りたダウンミトンも装着。
ダウンのフードを被った上からヘルメットも装着。
ニマはまず凄い勢いで自分のクランポンをつけ、ハーネスなどを装着。
凄まじく早かった。
その様子に、プロだわ〜、と感心してしまった。
私は手が思うように動かず、モタモタしていたら、ニマカンチャが私にクランポンとハーネスを付けてくれた。
ニマカンチャは、薄いフリースの手袋とウールの手袋をしかしていないのに寒くないって凄い。
そんなところから違うのか。
不要な荷物、トレッキングポールはこのクランポンポイントにデポして、ニマカンチャが私のザックを背負ってくれたので、私は手ぶらで進むことになった。
ここからはとにかく、何本だかわからないくらいたくさんのフィックスロープを登っていく。
心配していたカラビナやユイマールの付け替えは全てニマがやってくれた。ありがたい。
ユイマール(アッセンダー)付けたら凄い簡単に登れる!(滑らない)だけど、これ腕の力をめちゃ使うから腕が疲れて、そのせいでよく休憩した。
腕さえ疲れなければ楽しい。
後日クライミングをやっている島の友人に聞いたら、腕で上るものではないそうだ。
練習してくるべきだったな。
私の下にニマカンチャがいて、ロープを登り切るとまた次のロープにカラビナを付け替えてくれる。
1箇所切れているロープがあって、こういうことあると怖いよなと思う。
あと氷の中に入っちゃって凍ってしまっているロープもあって、ニマカンチャがガンガンロープを引っ張って取ってくれた。
ロープが1箇所から何本もぶら下がっていたところもあったので、どこから行くかというルート選びも、ニマカンチャが見て決めてきたもよう。
どのタイミングだったか忘れたけど、急にお腹が空いて力がなくなった時に、ニマカンチャに
「お腹すいちゃったぁ。」
って言ったら、あ、それ気づかなかったという感じで
「ソーリーソーリー、チョコ食べる?何食べる?」と聞いてくれ、自分で持ってきたエナジーバーをかじったけれど、思いのほか食べられず驚いた。咀嚼できなかった。
だんだん空が明るくなってきて、これが平地なら写真を撮りたいところだけど、めちゃ急なところだったから、目に焼き付けるしかできない。
薄暗い中、白い雪山が浮き出る姿は本当に神秘的だった。
そして、もう頂上が近いかのように大勘違いをして、「やだー、頂上で日の出見れちゃう?」なんて思っていたらまだまだ上にどーんとひと塊見えた。だ、だよね・・・。
こんなに垂直みたいな壁なのに不思議と怖いとは思わずもう無我夢中だったんだ。
暗くてよく見えなかたのも良かったのだと思う。
ここでも着々とこなしていくみたいな冷静な自分がいた。
傾斜が緩やかな、ロープがない所はニマカンチャが手を引いてくれ、一緒に歩いた。
日が出てくると暖かくなり、鼻水まみれの私の鼻下が濡れていたようで、汗かいているのかと思ったのか「暑い?」とダウンフードを脱がしてヘルメットを付け替えてくれた。
「暑いんじゃないのよー、それはきっと鼻水」って思ったけど、ほんと子供みたいに世話してもらってしまった。
そして、「あれがもう最後だよ!」という時が訪れ、えー!ついにと思ったのは覚えている。
そしてニマカンチャが先に行き、何か話し声がするなと思ったら電話をかけていた!笑
す、すごい!余裕すぎる!!
後からサミットは電波が入るんだと言っていた。笑
8:00 サミット!
ハイキャンプから7時間かかった。
5-6時間と聞いていたので、やはりコースタイムより時間がかかってしまったけど、無事に登頂できてよかった。
頂上は狭くて2、3人でいっぱいな感じ。
その先にロブチェウエストが続いている。
そちらはロープがないので難易度が高いみたいで、一般的にロブチェピークといえば、こちらのイーストピークのことを指すそうだ。
あまり歩き回れる広さはないけど、不思議と怖くはなくて、
本当に着いたんだー!やったー!というのと、
気持ちいいー、というのと、
ありがとうー!というのと。
憧れの雪山の中に入れた嬉しさと。
そんな気持ちだ溢れていた。
頂上の滞在時間は10分くらいで、もう写真撮り残しない?と聞かれて、もう一度撮って、そこから下山開始!
はや!1時間くらいゆっくりしようとする標高の低い山とは全然違うわ。
確かに、帰る時間もあるし、標高6000mのところに長時間滞在するのは危険だ。
エベレストなども滞在時間は10分くらいだそう。
下山はエイトカンはあまり使わず、ロープを持ち、カニ歩きでそのまま降ることが多かった。
確かにこれで行けたけど、段差が大っきかったので身長の低い私には、大きく足を開くことになり足がとても疲れた。
氷の壁になっていたところはアイゼンも刺さりづらく、壁に体を押し付けながら降った。
何度か滑って宙ぶらりんになったけど、ニマカンチャがいてくれるので、怖さはなかかった。むしろ笑えた。
雪が小さな木みたいにニョキニョキなっている姿は自然の造形美だな。
美しい雪の世界がたくさんあった。
行きは必死すぎたし、夜明けまで暗かった時間も長かったのでよく見えていなかったが、こんな所を歩いていたの?という景色が続き驚いた。
下りは早いとはいえ、なかなか長丁場。
靴が重いので早く脱ぎたいな、クランポンポイントに早くつかないかな、と思いながら下り、ここらへんだった気がすると思ったらやっぱりそうだった。
ふーよかった〜!思い靴を脱げるのが嬉しい。
そして、ひと休憩。
お腹すいたね、とハイキャンプでくれたスナックセットを出すと、選んだのは私もニマカンチャもマンゴジュース!!!
これはめちゃくちゃ美味しく感じた!おおおー、エナジーだねーと言って一気飲みした。
そういえば、ずっと水分もとっていなかった。
他には、厚くスライスしたチーズ、ココナッツビスケット、スニッカーズが入っていたけど、それば食べずにまた下る。
まだここから1時間半くらいあるからのんびりはしていられない。
ここから下りは楽勝でしょうと思っていたら、本当に足が動かなくて笑っちゃうくらいだった。
体力ほぼ使い切りましたって感じで、こんな体験は初めてだった。
気持ちはとっても元気なのに、いかんせん体が動かない。
ハイキャンプも見えてきた頃、あー、せっかくサミットで食べようと思って屋久島から持ってきた雪苔屋のレモンコッコを食べていないじゃないか!ということに気づき、座って食べた。
おいしいけど、一枚で食べるのにも疲れてしまい、残りは全部ニマカンチャにあげた。
まさかまさかの事態。
固形物の咀嚼ができないほど疲労していた。
ようやくようやくようやく、ハイキャンプに到着。
お腹が空いているのかよくわからないくらい疲れていて、とりあえず少し横になりたかった。
テントに荷物を置き、ロッジでお茶。
その間にコックがランチを作ってくれた。その間、私はしばらく横にならせてもらう。
体力の限界ってこういうことを言うんだな。
人生で一番疲れた体験だった。
ランチはインスタントヌードルとフレンチトースト。
ここのコックさんはそのとき食べやすいものを出してくれるのが素晴らしかった。
最初にヌードルスープをすする。
そして、フレンチトースト。
おいしかったのに半分残してしまった。
あまり食べられないほど疲れていた。
もうポーターが来ていたので、急いで荷物を整理する。
すっかり暑くなったので、ダウン類は脱いで、メリノウールタイツも脱ぐ。
スポルティバの靴や、アイゼン、ハーネスをザックに入れるのに一苦労。
疲れ過ぎていてとにかくスローモーションのようにしか動けなかった。
全部の荷物を私が自分でしまったのを知り、ニマがごめんと言っていた。
とにかくびっくりするくらい体がいうことを聞かないという体験。
そういう意味でも貴重な体験をしたと思う。
そして、急かされるようにしてハイキャンプを出発。
ディンボチェまで帰らないといけないからゆっくりはしていられない。
行きは、帰りは走れるよ私、なんて思っていたら、まあ足が動かない。びっくり。
それでもニマが急かしたりイラついた様子を見せないのが唯一の救い。
ベースキャンプまで降りると、「うわぁ、もうこんなに降ってきてしまったのか」と思うけど、ここからも、まあ長い長い。
下りでもいつものように早く歩けないのに、時々ある緩やかな登りですら立ち止まってしまう。
なんてこった。
くる時よりスローになっていないか。
なんとかトゥクラに到着しら「お茶でも飲む?」と提案してくれたので、もちろん!と思い、うんと即答。
とりあえず気分転換じゃないけど、ひと休みしないとディンボチェまで帰れない。
かと言ってトゥクラに泊まるのも嫌だしな。
お茶を飲んで休憩。
ショーケースの中にアップルパイがあった。
ベーカリーってこれか!
食べたい気もしたが、また食べたれないような気もした。
トゥクラを出発したらトレイルが全部日陰になっており寒かった。
風もビュービュー。
なんなら今日一番寒く感じて流石に途中でフリースを出して来たけど、ダウンやニット帽、ネックウォーマーは全部ポーターに手しまっていた、大失敗。
こんなに寒くなるとは思わなかった。
ほぼ話さず黙々と歩いていたが、私が植物に興味があるのがわかったようで、マッスルという植物を教えてくれた。
シャクナゲを小さくしたような外観で、良い香りがする。
シェルパ族はこれを朝焚いて、お祈りするのに使う植物だ。
そしてトゥクラからディンボチェってこんなに遠かったっけ?と思う。
全然着かないじゃん!馬にでも乗りたいと思う。
でも進むしかない。
ディンボチェでクサンが出迎えてくれることをイメージして頑張って歩く。
ニマカンチャに「疲れた?」と聞くと、ちょっと疲れた程度だそう。
シェルパ族恐るべし。
仕事だから精神的にも疲れるでしょう。
命かかってるしね。
でもニマはヘルメットはしていなかったので彼にとっては危なくないんだろうな。
あの最後の丘に登るのが嫌だなと思っていたら、なんと登らずにそのまま降ってピースフルロッジに帰れる道があるらしい!
ほんまかいな、と思っていたけど本当だった。
ようやくピースフルロッジに戻ってくると、クサンと奥さんが出迎えてくれて、奥さんはハグして誉めてくれたのですっごく嬉しかった。
とりあえずトイレと思い、洗面所で鏡を見たら見事に鼻の下が日焼けしていた。
鼻水が出過ぎて、日焼け止めが流れたようだ。
ヒリヒリする。
温かくて少し甘いシーバックトロンジュースを出してくれた。
はぁ〜、沁みる。
あまりに冷えたのでストーブの前に座るがいまいちまだ暖かくない。
「何か食べる?」ってクサンが聞いてくれたけど、「今は疲れ過ぎておなか空いているのかわからない」と答える。
一旦部屋へ行かせてもらおうとしたが、ニマカンチャはこのままパンボチェに帰ると言うので、チップの用意をしてすぐに戻ると伝え部屋へ。
なんとニマはクサンの奥さんの姉妹の旦那だそう!なるほどー!そういうことか!
チップいくらがいいのかわからなく、(大体クライミングガイド代がいくらなのかもわからない)
クサンに聞いても気持ちで良いです、というのでなんとなくな金額を包んだ。
足りただろうか。。。
顔洗って着替えて、とにかく寒いので、ストーブの前へ。
トゥクラからディンボチェまでの日陰&冷たい風ですっかり冷えてしまった。
それでもPeaceful Lodgeに帰ってくると少しづつ落ち着いてきて、夜ご飯も食べようと思うようになった。
8人くらいのグループがいて、ちょうどダルバートがあったようですぐに出してくれた。
ランチよりはたいぶ食べられるようになっていたが、あんなに体力使った割には、ご飯はお代わりしなくても足りた。
タルカリは私が好きな細切りじゃがいもで、辛くないお代わりを用意してくれていた。
優しい。
とにかく今日は早く寝よう、と食べたら部屋に戻った。
疲れているけど、興奮もしているし、地に足がついていないような感じもあるしでなかなか寝れなかった。
DAY16 ディンボチェ(4349m) *休息日
昨日の下りの足の動かさなっぷりから今日はレストデーとなった。
今日から普通にゴーキョに向けて出発すること考えていた私って、、、。
ピースフルロッジがあってくれてよかった。
昨晩は比較的よく寝れてた。
流石に疲れていたから。
9時ごろダイニングへ行くと、他のグループは出掛けており、誰もいない。
とりあえずブラックティーをもらいゆっくり飲んだ。
熱いお茶っておいしい。
お茶を飲んでいたら人とり朝やる仕事が終わったという感じで奥さんが座って本を見ながらお経を上げ始めた。
ニマカンチャのお経もすごく好きだったが、奥さんのお経もとても心地よくてずっと聞いていたくなった。
お経がヒーリングミュージックのようだ。
ハワイのオリもそうだが、お経というものも何か良い周波数があるんだろうな、という気がしてくる。
さあ、シャワーを浴びよう。
そんなに久しぶりでもないが、気持ちいい。
毎日入る普段の日本の生活が不思議になってくるほど、ヒマラヤではシャワーなしでも過ごせてしまう。(入ったらもちろん気持ち良いのだが。)
今日は前回より温度が上がらなかった。
そして、ランチ。
スプリングロールにしたら、皮がおいしかった。
サクサク。フレンチフライがついていたのが嬉しい。
ダイニングはこの時間あまり陽が当たっておらず、髪の毛も洗ったので頭が冷えそうだったので部屋へ。
部屋はぽかぽかで温かい。
ベッドの上で携帯いじりながら、ゆっくりした時間を過ごす。
そういえば昨日、クサンに
「馬乗りたいか?」
って聞かれれて
「乗りたい!トゥクラまで迎えに来て欲しかったくらい」
と言ったら、友達が馬持ってるから聞いてみるねって。
13時くらいにそのお友達が来てくれると言っていたが、一向に馬の気配がない。
多少遅れることもあるだろうとのんびり待っていたが、14:30になっても呼ばれないので、あれ?なくなった?と思い、クサンに聞きに行くと、近くの村(タンボチェだったかな?)に行ってるから、あと1時間くらいかかるとのこと。
おっけーおっけー!それが分かればスッキリ。
そうでした、ネパリタイム。
時間は本当にあてにならない。
そして、やっと馬が来たなと思ってダイニングへ行くと、そのお友達にまあお茶でも、となりしばし待機。
そしたらなんと!その間に誰かが馬に乗っていってしまったという。
えー!笑
そんなことあるの??
そういえばさっき誰かが馬に乗って丘の上の方に行くのを見たなぁ。
そんなこともあるのね。
いつものことなのか、割とみんな冷静。
そして、30か60分かしたら(どのくらいだったか忘れてしまった)ようやく馬がヤクを追いながら丘から降りてきた!
あの人知ってる人?って聞いたら隣の人なんだって。
ようやく私が馬に乗れる番がやってきた。
もうサンセットの時間になってきてしまったので、丘の上からサンセットを見ることになった。
馬は憧れの白い馬。名前はタシ。
タシに乗らせてもらうと暖かかった。
歩くとなかなか大変な道も、馬に乗せてもらうとスイスイ。
あっという間に丘の上まで来た。
ちょうど夕陽ローツェなどに当たる時間で、オレンジ色に染まり美しかった。
写真も撮ってくれた。
ロッジまで降りて、少しチップを渡した。
お金を取るつもりはなかったようだが、喜んでいたので良かった。
標高の高いところから降りてきたのにまだ咳がヤバイ。
あんなに気をつけていてもダメだったか。
クンブーコフ(クンブー地方の咳)と呼ばれる咳があり、エベレスト街道を歩いて帰ってくる人はかなりの確率でこの咳をしている人が多い。
乾季は雨が一滴も降らないと言って良いほど降らないので、地面が乾き、土道の細かな土が歩くたびに舞うので、
これを吸い、喉がやられるのだ。
この土に細菌がいて、粒子だけでなくその細菌が原因というのを何かで読んだこともある。
とにかくそんなわけで喉がやられ、気管支炎のように激しい咳が止まらない。
鼻水も出るので呼吸ができなくて苦しい。
それで起きてしまう。
寝ようとして10秒くらい経つともう息苦しくなって起きてしまう、というのを繰り返しながら結局ちゃんと寝れずに朝を迎えた。
続く
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エベレスト街道のトレッキング体験記が本になりました!
エベレスト街道とアンナプルナサーキット2冊あります。
1冊目はエベレスト街道を旅した本。
山好きの人にも、ネパールが好きな人にも、ネパールでトレッキングをしたい人にも、美しい世界を感じたい人にも、何かに挑戦したい人にもオススメです。
”こんなにも美しい大自然の中で、目一杯体を使い、五感をフル稼働させて体感した先にあったのは、自分への信頼と美しい地球に生きていることへの喜びだった”
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2冊目は2018年に旅したアンナプルナサーキット&アンナプルナベースキャンプの旅です。
すっかりヒマラヤに魅せられた著者は、2度目のネパールトレッキングへと旅立つ。今回はアンナプルナ山群の周りを一周するアンナプルナサーキットを舞台に、アンナプルナべースキャンプへも足を伸ばす。仲間との出会いによって旅が進んでいく。なぜこんなにもヒマラヤに魅せられてしまうのか、その答えが少しわかったような体験が待っていた。美しい数々の写真も見応えあります。ヒマラヤトレッキングを考えている人や山が好きな人はもちろん、これから山に登ってみたい人や自然に触れたい人にも手に取っていただきたい一冊です。
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